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水戸地方裁判所 昭和33年(ワ)46号 判決

原告 茨城県信用農業協同組合連合会

被告人 宮崎喜備 外四名

主文

被告らは連帯して原告に対し金一千八十六万八千七百七十七円及び内金二百四十万一千円に対しては昭和二十九年十月二十六日から、内金百万円に対しては同年十月三十一日から、内金二十三万九千円に対しては同年十二月二十一日から、内金百二十九万三千円に対しては同年十二月二十六日から、内金七万六千円に対しては昭和三十年二月十九日から、内金二十五万六千円に対しては同年七月十九日から、内金四十万一千円に対しては同年十二月二十一日から、内金六万六千円に対しては昭和三十一年一月十二日から、内金七万一千六百七円に対しては同年八月二十三日から、内金三万七千六百三十三円に対しては昭和三十二年三月三十日から、内金二十九万円に対しては同年六月二十三日から、内金三百六十万六千円に対しては同年十一月十三日からいずれも各完済に至るまで百円につき一日金四銭の割合による金員の支払をせよ。

訴訟費用は被告らの連帯負担とする。

この判決は原告において被告らに対し各金三十万円の担保を供するときは仮りに執行することができる。

事実

第一、当事者双方の申立

原告訴訟代理人は、主文第一、二項と同旨の判決並びに立保証を条件とする仮執行の宣言を求め、

被告ら五名訴訟代理人は、請求棄却の判決を求めた。

第二、当事者双方の主張

一、請求の原因

(一)、原告は、昭和二十八年十二月一日、訴外息栖村農業協同組合(以下訴外組合という。)に対し、被告らの連帯保証のもとに、肥料その他の資金として金百五十万円を、昭和二十八年十二月一日訴外組合振出、支払期日昭和二十八年十二月三十日の約束手形により、利息は日歩金二銭七厘の割合で昭和二十八年十二月一日から支払うこと、期限後は日歩金四銭の割合による遅延損害金を支払う旨の約定で貸付けたところ、訴外組合及び被告らの差入れた昭和二十九年六月十七日付延期証に基づき支払期日を同年十月三十日まで延期したが、訴外組合は、昭和二十九年六月十七日内金五十万円と同年十月三十日までの利息を支払つたのみで、残元金百万円及びこれに対する右支払期日の翌日である同年十月三十一日以降の日歩金四銭の割合による遅延損害金の支払をしない。

(二)(1)、原告は、昭和二十九年三月十一日、訴外組合に対し、被告らの連帯保証のもとに、冷害による被害農家に対する営農資金として金百六十四万三千円を、昭和二十九年十二月二十日から毎年十二月二十日に金三十二万八千六百円宛五ケ年払い、利息は年二分五厘(ただし、期間が端数の場合は日歩で計算し、年利を日歩に換算するときは毛までとし以下切上げる。利率の換算について以下同じ)の割合で各支払期日までの利息をその期日に支払うこと、期日後又は期限の利益を失うときは日歩金四銭の割合による遅延損害金を支払うこと及びこの資金の使途に違背したときは期限の利益を失う旨の約定で貸付けた。

ところが、訴外組合は、各年賦金の支払をせず、かつこの資金の使途に違反して使用したので、原告は、訴外組合及び各被告に対し、昭和三十二年十一月一日付内容証明郵便で同月十二日までに全額弁済するよう催告したところ、右催告状は同月四日頃訴外組合及び被告らに到達した。

しかるに、訴外組合は、右元金百六十四万三千円及び右元金に対する貸付の日である昭和二十九年三月十一日から第一回払込期日である昭和二十九年十二月二十日まで年二分五厘の割合による約定利息金三万二千三百九円並びに第二、三、四、五回分の元金合計金百三十一万四千四百円に対する第一回払込期日の翌日である昭和二十九年十二月二十一日から第二回払込期日である昭和三十年十二月二十日まで年二分五厘の割合による約定利息金三万二千八百六十円、第三、四、五回分の元金合計金九十八万五千八百円に対する第二回払込期日の翌日である昭和三十年十二月二十一日から第三回払込期日である昭和三十一年十二月二十日まで年二分五厘の割合による約定利息金二万四千六百四十五円、第四、五回分の元金合計金六十五万七千二百円に対する第三回払込期日の翌日である昭和三十一年十二月二十一日から催告による弁済期である昭和三十二年十一月十二日まで年二分五厘の割合による約定利息金一万四千八百二十八円、第一回分元金三十二万八千六百円に対する前記第一回払込み期日の翌日である昭和二十九年十二月二十一日から前記第二回払込み期日である昭和三十年十二月二十日まで日歩金四銭の割合による約定遅延損害金四万七千九百七十五円、第一、二回分元金合計六十五万七千二百円に対する前記第二回払込み期日の翌日である昭和三十年十二月二十一日から前記第三回払込み期日である昭和三十一年十二月二十日まで日歩金四銭の割合による約定遅延損害金九万五千九百五十一円、第一、二、三回分元金合計金九十八万五千八百円に対する前記第三回払込み期日の翌日である昭和三十一年十二月二十一日から前記催告による弁済期日である昭和三十二年十一月十二日まで日歩金四銭の割合による約定遅延損害金十二万八千九百四十二円及び元金百六十四万三千円に対する催告による弁済期の翌日である昭和三十二年十一月十三日以降の日歩金四銭の割合による約定遅延損害金の支払いをしない。

(2)、原告は、訴外組合に対し、被告らの連帯保証のもとに、昭和二十九年四月七日、冷害による被害農家に対する営農資金として金百四十三万九千円を、昭和二十九年十二月二十日から毎年十二月二十日に金二十八万七千八百円宛五ケ年払い、その他の条件は前項と同じ約定にて貸付けた。

ところが、訴外組合は、各年賦金の支払をせず、かつこの資金の使途に違反したので、原告は、訴外組合及び各被告に対し、前項同様の催告状により昭和三十二年十一月十二日までに全額弁済するよう催告したところ、右催告状は同月四日頃訴外組合及び被告らに到達した。

しかるに、訴外組合は、右貸付元金百四十三万九千円並びに右元金に対する貸付日である昭和二十九年四月七日から第一回払込み期日である昭和二十九年十二月二十日まで年二分五厘の割合による約定利息金二万五千六百十七円、第二、三、四、五回分の元金合計百十五万一千二百円に対する第一回払込み期日の翌日である昭和二十九年十二月二十一日から第二回払込み期日である昭和三十年十二月二十日まで年二分五厘の割合による約定利息金二万八千七百八十円、第三、四、五回分の元金合計金八十六万三千四百円に対する第二回払込み期日の翌日である昭和三十年十二月二十一日から第三回払込み期日である昭和三十一年十二月二十日まで年二分五厘の割合による約定利息金二万一千五百八十五円、第四、五回分元金合計金五十七万五千六百円に対する第三回払込み期日の翌日である昭和三十一年十二月二十一日から催告による弁済期である昭和三十二年十一月十二日まで年二分五厘の割合による約定利息金一万二千九百八十七円、第一回分元金二十八万七千八百円に対する前記第一回払込み期日の翌日である昭和二十九年十二月二十一日から前記第二回払込み期日である昭和三十年十二月二十日まで日歩金四銭の割合による約定遅延損害金四万二千十八円、第一、二回分元金合計金五十七万五千六百円に対する前記第二回払込み期日の翌日である昭和三十年十二月二十一日から前記第三回払込み期日である昭和三十一年十二月二十日まで日歩金四銭の割合による遅延損害金八万四千二百六十七円、第一、二、三回分の元金合計金八十六万三千四百円に対する前記第三回払込み期日の翌日である昭和三十一年十二月二十一日から前記催告による弁済期日である昭和三十二年十一月十二日まで日歩金四銭の割合による約定遅延損害金十一万二千九百三十二円及び元金百四十三万九千円に対する催告による弁済期日の翌日である昭和三十二年十一月十三日以降日歩金四銭の割合による約定遅延損害金の支払をしない。

(3)、原告は、訴外組合に対し、被告らの連帯保証のもとに昭和二十九年五月十日、冷害による被害農家に対する営農資金として金五十二万四千円を、昭和二十九年十二月二十日から毎年十二月二十日に金十万四千八百円宛五ケ年払い、その他の条件は(1) 項の場合と同じ約定にて貸付けた。

ところが、訴外組合は、各年賦金の支払をせず、かつこの資金の使途に違反したので、原告は、訴外組合及び各被告に対し、(1) 項と同様の催告状により、昭和三十二年十一月十二日までに全額弁済するよう催告したところ、右催告状は同月四日頃訴外組合及び被告らに到達した。

しかるに、訴外組合は、右元金五十二万四千円並びに右元金に対する貸付の日である昭和二十九年五月十日から第一回払込期日である昭和二十九年十二月二十日まで年二分五厘の割合による約定利息金八千百三十五円、第二、三、四、五回分の元金合計金四十一万九千二百円に対する第一回払込期日の翌日である昭和二十九年十二月二十一日から第二回払込期日である昭和三十年十二月二十日まで年二分五厘の割合による約定利息金一万四百八十円、第三、四、五回分元金合計金三十一万四千四百円に対する第二回払込期日の翌日である昭和三十年十二月二十一日から第三回払込期日である昭和三十一年十二月二十日まで年二分五厘の割合による約定利息金七千八百六十円、第四、五回分元金合計金二十万九千六百円に対する第三回払込期日の翌日である昭和三十一年十二月二十一日から催告による弁済期である昭和三十二年十一月十二日まで年二分五厘の割合による約定利息金四千七百二十八円、第一回分元金十万四千八百円に対する前記第一回払込み期日の翌日である昭和二十九年十二月二十一日から前記第二回払込み期日である昭和三十年十二月二十日まで日歩金四銭の割合による約定遅延損害金一万五千三百円、第一、二回分元金合計金二十万九千六百円に対する前記第二回払込み期日の翌日である昭和三十年十二月二十一日から前記第三回払込み期日である昭和三十一年十二月二十日まで日歩金四銭の割合による約定遅延損害金三万六百八十五円、第一、二、三回分元金合計金三十一万四千四百円に対する前記第三回払込期日の翌日である昭和三十一年十二月二十一日から前記催告による弁済期である昭和三十二年十一月十二日まで日歩金四銭の割合による約定遅延損害金四万一千百二十三円及び元金五十二万四千円に対する催告による弁済期の翌日である昭和三十二年十一月十三日以降日歩金四銭の割合による約定遅延損害金の支払いをしない。

(4)、原告は、訴外組合に対し、被告らの連帯保証のもとに昭和二十九年五月十日、冷害による被害農家に対する営農資金として金四十万一千円を、昭和二十九年十二月二十日金二十万五百円、昭和三十年十二月二十日金二十万五百円宛二回払いで返済すること、利息は年二分五厘の割合で各払込期日までの利息をその期日に支払うこと、期日に支払いを怠つたときは日歩金四銭の割合による遅延損害金を支払うことという約定にて貸付けた。

しかるに訴外組合は右元金四十万一千円並びに右元金に対する貸付の日である昭和二十九年五月十日から第一回払込期日である昭和二十九年十二月二十日まで年二分五厘の割合による約定利息金六千二百二十五円、第二回分元金二十万五百円に対する第一回払込期日の翌日である昭和二十九年十二月二十一日から第二回払込期日である昭和三十年十二月二十日まで年二分五厘の割合による約定利息金五千十二円、第一回分元金二十万五百円に対する前記第一回払込み期日の翌日である昭和二十九年十二月二十一日から前記第二回払込み期日である昭和三十年十二月二十日まで日歩金四銭の割合による約定遅延損害金二万九千二百七十三円及び元金四十万一千円に対する第二回払込期日の翌日である昭和三十年十二月二十一日以降日歩金四銭の割合による約定遅延損害金の支払いをしない。

(三)、原告は、昭和二十九年四月十六日訴外組合との間に、借入限度額金一千万円、返済期日昭和二十九年十二月二十日までの必要最短期間、利息は日歩金二銭二厘、期日後は日歩金四銭の割合による遅延損害金を支払うという約定にて農業手形借入に関する契約を締結し、被告等は、各自、右契約に基づいて生ずる訴外組合の原告に対する一切の債務について連帯保証をした。

しかして、原告は右契約に基づき次のとおり貸付けたが、訴外組合はその支払をしない。すなわち、

(1) 、原告は、昭和二十九年四月二十一日、訴外組合が同月十五日原告に宛て振出した、額面金五十六万八千円、支払期日同年十二月二十五日、支払地水戸市、支払場所原告事務所、振出地茨城県鹿島郡息栖村なる約束手形に基づき右金額を貸付けた。

しかし、訴外組合は、右金額及びこれに対する右支払期日の翌日である昭和二十九年十二月二十六日以降日歩金四銭の割合による約定遅延損害金の支払いをしない。

(2) 、原告は、同年四月二十一日、訴外組合が同月十五日原告に宛て振出した、額面金七十二万五千円、支払期日同年十二月二十五日、その他の要件は(1) と同じ約束手形に基づき右金額を貸付けた。

しかし、訴外組合は、右金額及びこれに対する右支払期日の翌日である昭和二十九年十二月二十六日以降日歩金四銭の割合による約定遅延損害金の支払いをしない。

(3) 、原告は、同年四月二十一日、訴外組合が同月十五日原告に宛て振出した、額面金九十五万三千円、支払期日同年十月二十五日、その他の要件は(1) に同じの約束手形に基づき右金額を貸付けた。

しかし訴外組合は、右金額及びこれに対する右支払期日の翌日である昭和二十九年十月二十六日以降日歩金四銭の割合による約定遅延損害金の支払いをしない。

(4) 、原告は、同年四月二十一日、訴外組合が同月十五日原告に宛て提出した、額面金七十三万二千円、支払期日同年十月二十五日、その他の要件は(1) に同じの約束手形に基づき右金額を貸付けた。

しかし、訴外組合は、右金額及びこれに対する右支払期日の翌日である昭和二十九年十月二十六日以降日歩金四銭の割合による約定遅延損害金の支払いをしない。

(5) 、原告は、同年四月二十一日、訴外組合が同月十五日原告に宛て振出した、額面金八万六千円、支払期日同年十月二十五日、その他の要件は(1) に同じの約束手形に基づき右金額を貸付けた。

しかし、訴外組合は、昭和三十年二月十八日金一万円を支払つたのみで、残元金七万六千円、並びに元金八万六千円に対する右支払期日の翌日である昭和二十九年十月二十六日から右金一万円を弁済した日である昭和三十年二月十八日まで日歩金四銭の割合による約定遅延損害金三千九百九十円及び残元金七万六千円に対する右一部弁済の日の翌日である昭和三十年二月十九日以降日歩金四銭の割合による約定遅延損害金の支払いをしない。

(6) 、原告は、同年四月二十四日、訴外組合が同月十五日原告に宛て振出した、額面金十九万五千円、支払期日同年十一月十五日、その他の要件は(1) に同じの約束手形に基づき右金額を貸付けた。

しかし、訴外組合は、昭和三十年十二月二十三日金十万円昭和三十一年一月五日金二万六千円及び同月十一日金三千円を支払つたのみで、残元金六万六千円、並びに元金十九万五千円に対する右支払期日の翌日である昭和二十九年十一月十六日から元金十万円を一部弁済した日である昭和三十年十二月二十三日まで日歩金四銭の割合による約定遅延損害金三万一千四百三十四円、元金九万五千円に対する右一部弁済の日の翌日である昭和三十年十二月二十四日から元金二万六千円を一部弁済した日である昭和三十一年一月五日まで日歩金四銭の割合による約定遅延損害金四百九十四円、元金六万九千円に対する右弁済の日の翌日である昭和三十一年一月六日から元金三千円を一部弁済した日である昭和三十一年一月十一日まで日歩金四銭の割合による約定遅延損害金百六十五円及び残元金六万六千円に対する右弁済の日の翌日である昭和三十一年一月十二日以降日歩金四銭の割合による約定遅延損害金の支払いをしない。

(7) 、原告は、同年四月二十四日、訴外組合が同月十五日原告に宛て振出した、額面金七十一万六千円、支払期日同年十月二十五日、その他の要件は(1) に同じの約束手形に基づき右金額を貸付けた。

しかし、訴外組合は、右金額及びこれに対する右支払期日の翌日である昭和二十九年十月二十六日以降日歩金四銭の割合による約定遅延損害金の支払いをしない。

(8) 、原告は、同年五月七日、訴外組合が同年四月三十日原告に宛て振出した、額面金六十八万円、支払期日同年十一月五日、その他の要件は(1) に同じの約束手形に基づき右金額を貸付けた。

しかし、訴外組合は、昭和二十九年十月二十八日金三十七万二百八十九円、同年十一月十五日金一万一千八百五十八円、同月二十四日金四千五百円、同年十二月六日金四千八百三十六円及び昭和三十年七月十八日金三万二千五百十七円を支払つたのみで、残元金二十五万六千円並びに元金二十九万七千八百五十三円に対する元金一万一千八百五十八円を一部弁済した日の翌日である昭和二十九年十一月十六日から元金四千五百円を一部弁済した日である昭和二十九年十一月二十四日まで日歩金四銭の割合による約定遅延損害金一千七十二円、元金二十九万三千三百五十円に対する右一部弁済の日の翌日である昭和二十九年十一月二十五日から元金四千八百三十六円を一部弁済した日である昭和二十九年十二月六日まで日歩金四銭の割合による約定遅延損害金一千四百八円、元金二十八万八千五百十七円に対する右一部弁済の日の翌日である昭和二十九年十二月七日から元金三万二千五百十七円を一部弁済した日である昭和三十年七月十八日まで日歩金四銭の割合による約定遅延損害金二万五千八百五十一円及び残元金二十五万六千円に対する右一部弁済の日の翌日である昭和三十年七月十九日以降日歩金四銭の割合による約定遅延損害金の支払いをしない。

(9) 、原告は、同年五月十七日、訴外組合が同月一日原告に宛て振出した、額面金五十二万九千円、支払期日同年十一月五日、その他の要件(1) に同じの約束手形に基づき右金額を貸付けた。

しかし、訴外組合は、昭和三十二年六月十五日金十八万九千円及び同月二十二日金五万円を支払つたのみで残元金二十九万円並びに元金五十二万九千円に対する支払期日の翌日である昭和二十九年十一月六日から元金十八万九千円を一部弁済した日である昭和三十二年六月十五日まで日歩金四銭の割合による約定遅延損害金二十万一千六百五十四円、元金三十四万円に対する右一部弁済の日の翌日である昭和三十二年六月十六日から元金五万円を一部弁済した日である昭和三十二年六月二十二日まで日歩金四銭の割合による約定遅延損害金九百五十二円及び残元金二十九万円に対する右一部弁済の日の翌日である昭和三十二年六月二十三日以降日歩金四銭の割合による約定遅延損害金の支払いをしない。

(10)、原告は、同年五月二十日、訴外組合が同月十五日原告に宛て振出した、額面金二十三万九千円、支払期日同年十二月二十日、その他の要件(1) に同じの約束手形に基づき右金額を貸付けた。

しかし、訴外組合は右金額及びこれに対する右支払期日の翌日である昭和二十九年十二月二十一日以降日歩金四銭の割合による約定遅延損害金の支払いをしない。

(四)、原告は、昭和二十七年十月三十日訴外組合及び被告らとの間に、訴外組合が訴外農林中央金庫から融資を受ける際は原告において訴外組合の右借入金債務を保証すること、原告か訴外農林中央金庫に対し訴外組合の右債務を弁済したときは、訴外組合は原告に対し原告の右弁済金全額及びこれに対する弁済の日から償還日まて日歩金四銭の割合による損害金を支払うこと、右被告らは訴外組合の原告に対する右債務を訴外組合と連帯して支払うこと等の約定のもとに保証委託契約を締結した。

そして、原告は、昭和二十七年十一月一日訴外農林中央金庫から金二十四万五千円を借受け、原告は右契約に基づいて、訴外組合の右債務を保証した。

ところが、訴外組合が右債務を弁済期日に支払わなかつたので、原告は、昭和三十一年八月二十三日に金七万一千六百七円を、昭和三十二年三月三十日に金三万七千六百三十三円を訴外組合に代つて前記訴外金庫に支払つた。

しかるに、訴外組合及び被告らは、右代位弁済金合計金十万九千二百四十円並ひに内金七万一千六百七円に対する前記弁済の日である昭和三十一年八月二十三日以降の日歩金四銭の割合による約定遅延損害金及び内金三万七千六百三十三円に対する前記弁済の日である昭和三十二年三月三十日以降の日歩金四銭の割合による約定遅延損害金の支払いをしない。

(五)、よつて、原告は訴外組合の連帯保証人である被告らに対し前記(一)ないし(四)の金員につき請求の趣旨のとおり連帯支払を求めるため本訴に及んだ。

二、被告馬場鉄治、同馬場佳二郎及び同新河善重の答弁

原告主張の請求原因(一)ないし(四)の各事実はいすれも認める。

三、被告宮崎及び同池上の答弁

(一)、原告主張の請求原因(一)のうち、訴外組合が昭和二十八年十二月一日原告主張の約束手形を振出し、これによつて原告から金百五十万円を原告主張の約定にて借り受けたこと、訴外組合及び被告らが原告主張の日その主張の延期証を原告に差入れたこと、及び訴外組合が昭和二十九年六月十七日内金五十万円を支払つたことは認めるが、その余の主張事実は争う。

(二)、請求原因(二)のうち、(1) ないし(3) の金員につき原告主張のような内容の催告状がその主張の頃訴外組合及び被告らにそれぞれ到達したが、訴外組合及び被告らが原告主張の金員を右期日までに支払わなかつたことは認めるが、訴外組合が原告から(1) ないし(4) の各金員を原告主張の頃その主張の約定にて借入れたこと及び被告らが訴外組合の右借入金債務につき連帯保証したとの点はいずれも争う。

(三)、請求原因(三)のうち、訴外組合が昭和二十九年四月十六日原告との間に原告主張の約定にて農業手形借入れに関する契約を結んだこと、被告らが右契約から生ずる訴外組合の債務につき連帯保証する旨約したことは認めるが、訴外組合が右契約に基づき約束手形割引の方法にて原告からその主張の(1) ないし(10)の金員をその主張の頃借入れたとの点はいずれも争う。

(四)、請求原因(四)の主張事実はすべて争う。

四、被告ら五名の主張及び抗弁

(一)  請求原因(一)に対し、

訴外組合は、請求原因(一)の貸金百五十万円に対し、昭和二十九年五月十七日金百三十五万円を続いて同年六月十七日金五十万円を支払つた。よつて右貸金に対しては金三十五万円の過払となる。右過払金は訴外組合の原告に対する他の債務に弁済充当されるべきである。

また、原告主張の延期証が差入れられたことは前述のとおり認めるが、それが作成されるに至つた経過は次のとおりであつて、被告らは右延期証を差入れたことから生ずる責任を負担するものではない。すなわち、訴外組合は右のように同年五月十七日原告に対し内金百三十五万円を弁済したが、その後に至つて被告組合代表者が組合の金を横領し費消したため、昭和二十九年度において組合員に貸付けるべき営農資金の手持ちが無くなつてしまつた。そこで訴外組合代表者は新たに金百万円の融資を懇請したところ、原告もこれを認めさきに内入弁済した金百三十五万円は弁済を受けなかつたことに処理し、改めて同年六月十七日前記のように金五十万円を弁済させるとともに前記延期証を作成させてこれを差入れさせ、金百万円を訴外組合に貸付けたようになしたのである。しかし右処理は単に帳簿上の操作に過ぎず右百三十五万円は既に支払済みである。ところが訴外組合代表者は右のような経緯を秘し被告らに対し右延期証に捺印を求めたので被告らはこれに捺印した。しかしながら右延期証は既に消滅した債務に対する延期証であるから何らの効力を有しないものである。

(二)、請求原因(二)に対し、

仮りに、原告主張のように、訴外組合が被告らの連帯保証のもとに請求原因(二)の(1) ないし(4) の各金員を原告から借入れたとしても、そもそも訴外組合の定款第四十九条第二項第十六号によると、訴外組合が金融機関その他から借入れる借入金限度は総会の議決を経べき旨定められているところ、昭和二十九年度分に関しては総会においてその議決がなされていない。従つて訴外組合と原告との間の右金銭消費貸借契約はその成立に関する有効要件を欠き無効てあり、被告らは連帯保証人としてこれが支払の義務を負わない。

(三)  請求原因(三)に対し

仮りに、原告主張のとおり、訴外組合が原告から手形割引の方法により請求原因(三)の(1) ないし(10)の各金員の貸付を受けたとしても、被告らが訴外組合の農業手形借入れに関する契約上の債務につき連帯保証する旨約したのは、右契約成立日である昭和二十九年四月十六日であつて、それ以前において訴外組合が貸付を受けた同(三)の(1) ないし(7) の約束手形に対しては被告らは連帯保証人としての支払の義務はない。

五、被告ら五名の主張及び抗弁に対する原告の答弁

(一)、原告が被告ら主張の金百三十五万円を訴外組合から請求原因(一)の貸金百五十万円に対し内入弁済を受けたことに一たん取扱い、その後訴外組合の申出によりこれを取消すことにしたことは認めるが、その経過は被告ら主張のとおりではない。すなわち、原告は昭和二十九年五月十七日訴外組合に対し農業手形六通を担保にし金三百二万円を貸付け、これを原告に対する訴外組合の特別当座貯金口座に振込みその内より被告ら主張の金百三十五万円を払戻して請求原因(一)の貸金百五十万円に対する弁済に充当した。ところがその後同年六月十七日訴外組合からの申出があつたので右金百三十五万円の弁済を取消すことに取扱うこととし、同日直ちに訴外組合の特別当座貯金口座に振込んだものであつて、右百三十五万円は償還を受けたことになつていない。

(二)、被告ら主張のように、訴外組合の定款第四十九条第二項第十六号には、被告組合の借入金限度につき総会の議決を経べきことに定められてあること、及び訴外組合の昭和二十九年度借入金に関し総会の決議がなされていないことは認める。しかし、原告は、昭和二十九年二月十二日訴外組合から昭和二十八年度営農資金として金三千九百九十二万八千円の借入申込を受けた際における申込書中に、訴外組合の昭和二十八年五月十日の総会において昭和二十八年度の最高借入金限度は金六百万円以内とする。ただし農業手形(及びこれに準ずるものを含む)は右の限度外とするととの議決がなされた旨の記載があつたので、これを信じ、かつ昭和二十五年十一月十六日政令第三三七号農業協同組合財務処理規準令第六条の規定に従つて、請求原因(二)の(1) ないし(4) の各金員をいずれも貸付限度外として貸付けたものである。右各金員の借入は訴外組合の定款の定める借入限度に関する総会の議決を経ていないから無効であるとの主張は理由がない。

(三)、原告が請求原因(三)の(1) ないし(10)の各金員を訴外組合に貸付けたのは、いずれも昭和二十九年四月二十一日以降であつて、被告らが原告主張の連帯保証を約した基本約定書の日付である同月十六日以後のことに属する。従つてこの点に関する被告らの主張はまた理由がない。

第三、証拠関係

原告訴訟代理人は、甲第一ないし第二十三号証を提出し、証人山中利夫(一、二回)及び同砂押重美の尋問を求めた。

被告宮崎及び同池上は、証人城之内昭三郎の尋問を求め、甲第一ないし第七号証、第十八号証及び第十九号証は、被告らの記名及び各名下の印影がそれぞれ被告らの記名であり被告らの印章の印顆によつて顕出されたものであることは認めるが、その余の部分の成立は不知、甲第八ないし第十七号証、第二十一号証及び第二十二号証の成立はいずれも不知、甲第二十号証及び第二十三号証はいずれも成立は認めると述べ、甲第二十三号証を利益に援用した。

理由

一、請求原因について。

(1)、原告が昭和二十八年十二月一日訴外組合に対し金百五十万円を原告主張の約定にて貸付けたことは原告と被告ら五名との間に争いがなく、被告馬場鉄治、馬場佳二郎及び同新河善重が同日訴外組合の右借入金債務につき連帯保証する旨約したことは原告と右被告三名との間に争いがない。そして被告宮崎喜備及び同池上重雄の各記名及びその名下の各印影がそれぞれ右被告らの記名であり被告らの印章の印顆によつて顕出されたものであることは原告と右被告らとの間に争いがなく、これに証人山中利夫の証言(一回)を併せ考えると甲第一号証(約束手形)中右被告両名の関係部分はいずれも真正に成立したものと認められるところ、同第一号証中右被告両名の関係部分の記載に同証人の証言(一回)を綜合すると、右被告両名もまた同日訴外組合の前記貸金債務につき連帯保証をしたことが認められ、右認定を左右するに足る証拠はない。

(2)、次に、被告らは、訴外組合は右貸金百五十万円に対し昭和二十九年五月十七日金百三十万円を続いて同年六月十七日金五十万円を支払つたから既に金三十五万円の過払いとなつているところ、訴外組合はその後原告主張の延期証を差入れ貸金残金に対する支払期限の延期を求めたのであるが、右延期証は被告ら主張のような経緯によつて作成されたもので、既に弁済ずみの債務に対するもので何らの効力を有しない旨主張するから検討するに、訴外組合が右貸金百五十万円に対し同年五月十七日金百三十五万円を一たん支払つたことがあること、続いて同年六月十七日内金五十万円を弁済したこと、そして訴外組合及び被告らが同日原告に対しその主張の延期証を差入れたことは原告と被告ら五名との間に争いがないところである。しかし、被告ら五名の関係部分につきそれぞれ真正に成立したと認める甲第二号証(被告宮崎及び同池上の各記名及びその名下の各印影がそれぞれ右被告らの記名であり、被告らの印章の印顆によつて顕出されたものであることは原告と右被告らとの間に争いがなく、これに証人山中利夫の証言(一回)を綜合すると、右被告両名の関係部分は真正に成立したと認めることができ、また弁論の全趣旨によるとその余の被告ら三名の関係部分についても真正に成立したと認められる。)及び成立の真正であることにつき原告と被告宮崎及び同池上との間に争いがなく、弁論の全趣旨によると他の被告との間においても真正に成立したと推認できる甲第二十三号証(貯金元帳)の各記載に証人山中利夫(一、二回)同砂押重美及び同城之内昭三郎の各証言を綜合すると、前記貸金百五十万円は既に弁済期が到来していたので原告は同年五月十七日訴外組合の原告に対する預金から金百三十五万円を落して右貸金百五十万円の内金に相殺充当する措置をとり右金額の償還を受けたことにしたが、当時訴外組合はその経営状態が悪化の一途を辿つており右百三十五万円を支払うときは資金繰りに困窮することになるので、その後原告に対し右百三十五万円の内入償還措置の取消し方並びに右貸金の支払期限の延期方を懇請したところ、原告も右申入を容れることになり、両者協議のうえ原告は前記百三十五万円の償還の取消しを認め、その代り訴外組合は新たに同年六月十七日前記貸金に対し前記金五十万円を弁済するとともに前記のような延期証を差入れることになつた経緯にあること、そして原告及び訴外組合ともにその頃右償還取消し措置に相応ずるよう帳簿上の操作を完結したことが認められる(右認定を左右するに足る証拠はない)のであつて、以上の事実よりすると、訴外組合は原告に対し前記貸金百五十万円につき、なお差引き金百万円の残債務を負担するのであり、右残債務は同年十月三十日まで支払期限の猶予を得たに過ぎないものといわねばならない。被告らの前記主張は理由がない。

(3)、しかして、訴外組合はその後昭和二十九年十月三十日までの約定利息を支払つたのみで、残元金百万円及び原告主張の約定損害金を支払つていないことは被告馬場鉄治、同馬場佳二郎及び同新河善重の自認するところであり、弁論の全趣旨によればその余の被告両名に対する関係においても右事実を認めるに足る。

以上のとおりとすれば、被告らは連帯して原告に対し残元金一〇〇万円及びこれに対する原告主張の約定損害金を支払う義務があるというべく、原告の請求原因(一)についての請求は理由がある。

二、請求原因(二)について

(1)、原告がその主張の頃訴外組合に対し請求原因(二)の(1) ないし(4) の各金員をその主張の約定にてそれぞれ貸付け、被告馬場鉄治、同馬場佳二郎及び同新河善重が各自訴外組合の右各借入金債務につき連帯保証をなす旨約したことは原告と右被告三名間に争いがない。

また、被告宮崎喜備及び同池上重雄の各記名及びその名下の各印影がいずれも右被告らの記名であり被告らの印章の印顆によつて顕出されたものであることは原告と右被告らとの間に争いがなく、特段の反対事情も認められないから、右被告両名の関係部分につき真正に成立したと推定される甲第三号証ないし甲第六号証(いずれも借用証書)の各記載によると、原告がその主張の日に請求原因(二)の(1) ないし(4) の各金員をその主張の約定にて訴外組合にそれぞれ貸付けたこと、そして右被告両名が訴外組合の右各借入金債務につきそれぞれ連帯保証する旨約したことが認められる。(甲第三号証をもつて請求原因(二)の(4) の事実を同第四号証をもつて同(二)の(1) の事実を、同第五号証をもつて同(二)の(2) の事実を、同第六号証をもつて同(二)の(3) の事実をそれぞれ認めることができる。)右認定を左右するに足る証拠はない。

(2)、被告らは、仮りに訴外組合が原告から原告主張の右各金員を借入れることに約したとしても、そもそも訴外組合の定款第四十九条第二項第十六号によると、訴外組合が金融機関等から借入れる借入金限度は総会の議決を経べきことに定められているにかかわらず、訴外組合の昭和二十九年度借入金額に関して総会において右の議決がなされていないから、原告と訴外組合との右消費貸借契約はその有効要件を欠き無効である旨主張するから検討する。

まず、訴外組合の定款第四十九条第二項第十六号に被告ら主張のような訴外組合がなす借入金限度は総会の議決を経べき旨の定めがあり、そして訴外組合の昭和二十九年度借入金額に関しては総会の議決がなされていないことは原告と被告ら五名との間に争いがない。

しかしながら、訴外組合が農業協同組合法に基づく農業協同組合であることは弁論の全趣旨に徴し明らかであるところ、右の農業協同組合は組合員の事業または生活に必要な資金の貸付その他これに附帯する事業を行うことをその目的の一つとするものであるから農業協同組合が金融機関から右の事業に必要な資金の借入れをなすことはその金額の多少にかかわらず本来右組合の目的の範囲に属するものというべく、従つて農業協同組合である訴外組合が金融機関である原告との間に請求原因(二)の(1) ないし(4) の各金員につき消費貸借契約を締結することは訴外組合の行為能力の範囲に属するものであつて有効にこれをなし得るのである。しかして農業協同組合法第四十四条第一項第三号によると一般に農業協同組合における毎事業年度の事業計画の設定及び変更は総会の決議事項となつているのであるが、訴外組合の前記内容のような定款の定めは、右農業協同組合法にいう事業計画の設定の一環として、ないしはこれに附帯して、総会において予め訴外組合の過年度における資金需要の実績、新年度における事業計画の規模等を検討の上新年度における右事業の遂行上必要とされる資金予定額を算出しこれを議決せしめておく趣旨のものと解される。ところで右のような議決がなされると、これは代表機関に対する借入権限の制限となるから理事が議決された金額を超えて借入れすることができないわけであるが、しかしかような代表機関の権限に対する制限は、これをもつて善意の第三者に対抗できない。また本件の如く総会において借入金限度について議決がなされていない場合においては、定款によつて借入金限度が総会の決議事項と定められている以上、代表機関たる理事が一存で借入金限度額を策定することができないことはいうまでもないけれども、組合の事業遂行上必要とされる資金を全く借入れることができないと解すべきではなく、当年度の事業計画につき過年度における総会の決議内容等を照合検討して合理的な範囲における必要金額ならばこれを借入れることができるものいわば代表機関の借入金限度を右合理的範囲とする旨の総会の決議が消極的に存するものと解すべきである。そしてこの場合においても代表機関の権限に対する制限は善意の第三者に対抗することができないものである。

ところで、原告は、請求原因(二)の(1) ないし(4) の各金員の貸付については、昭和二十九年二月十二日訴外組合から昭和二十八年度営農資金として金三千九百九十二万八千円の借入申込を受けた際における申込書中に、訴外組合の昭和二十八年五月十日の総会において昭和二十八年度の最高借入金限度は金六百万円とするが、農業手形(及びこれに準ずるもの)は右の限度外とするとの決議がなされた旨の記載があつたからこれを信じ、かつ昭和二十五年十一月十六日政令第三三七号農業協同組合財務処理規準令第六条の規定に従つて、以上の各金員をいずれも農業手形による貸付限度外として貸付けたもので、右各金員貸付け当時は前記訴外組合の定款に基づく総会の決議のなかつたことについては善意であり貸付限度外と信じて貸付けた旨主張するところ、証人砂押重美の証言及び弁論の全趣旨によると右主張事実を認めることができるから、訴外組合の昭和二十九年度借入金限度額について総会の決議がなされていないことによつて消極的に加えられた訴外組合の理事に対する代表権限の制限をもつて善意の原告に対抗しえないものといわねばならない。

被告らの前記主張は理由がない。

(3)、訴外組合が請求原因(二)の(1) ないし(3) の各貸付金につき約定の貸付条件に違反し、かつ各年賦金の支払をしないことは、原告と被告馬場鉄治、同馬場佳二郎及び同新河善重との間に争いがなく、証人砂押重美の証言及び弁論の全趣旨によると、原告と被告宮崎及び同池上との間においても右事実を認めることができる。そして原告が訴外組合及び各被告に対し訴外組合が右貸付条件に違反したことを理由にして前示約旨に基づき昭和三十二年十一月一日付内容証明郵便をもつて同月十二日までに前記(1) ないし(3) の各金員全額をそれぞれ弁済するよう催告し、右催告状が同月四日頃訴外組合及び各被告に到達したが、訴外組合及び被告らがいずれも原告主張の各金員の支払をしなかつたことは、原告と被告ら五名との間に争いがないから、請求原因(二)の(1) ないし(3) の各貸付金は原告主張の日にいずれも期限の利益を失つたものといわねばならない。

また、訴外組合及び被告らが請求原因(二)の(4) の各年賦金を原告主張の各支払期日に支払をしなかつたことは、被告馬場鉄治、同馬場佳二郎及び同新河善重の自認するところであり、原告と被告宮崎及び同池上との間においても弁論の全趣旨により右事実を認めることができる。

(4)、以上のとおりとすれば、被告らは連帯して原告に対し原告が請求原因(二)の(1) ないし(4) の後段において主張する各元金及びこれに対する約定利息並びに損害金を支払う義務があるといわねばならない。

よつて原告の請求原因(二)についての請求は理由がある。

三、請求原因(三)について。

(1)、原告が昭和二十九年四月十六日訴外組合との間に貸付金限度額一千万円、返済期限同年十二月二十日までの必要最短期間、利率日歩金二銭二厘、期限後は日歩金四銭の割合による損害金を支払う約定にて農業手形貸付に関する契約を取結び、被告ら五名が右契約から生ずる訴外組合の一切の債務につき連帯保証する旨約し、訴外組合及び被告らが右趣旨の農業手形借入に関する約定並に保証書を原告に差入れたことは原告と被告ら五名との間に争いがない。

そして、訴外組合が右約定に基づき請求原因(三)の(1) ないし(10)の各約束手形を原告に宛て振出し、原告がその主張の日に右各約束手形に基づき請求原因(三)の(1) ないし(10)の各金員をそれぞれ訴外組合に貸付けたことは、原告と被告馬場鉄治、同馬場佳二郎及び同新河善重との間に争いがない。

また、証人山中利夫の証言(一回)によりいずれも真正に成立したと認められる甲第八号証ないし第十七号証の各記載に証人山中利夫(一回)及び同砂押重美の各証言を綜合すると、訴外組合が、前記農業手形借入に関する約定並びに保証契約に基づき、原告主張の請求原因(三)の(1) ないし(10)の各約束手形を原告に宛て振出したこと、そして原告がその主張の日に右各約束手形に基づき、請求原因(三)の(1) ないし(10)の各金員をそれぞれ訴外組合に貸付けたことが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

(2)、被告らは、被告らが原告と訴外組合との間の前記農業手形借入に関する契約において訴外組合の債務につき連帯保証する旨約したのは昭和二十九年四月十六日であるのに、訴外組合が原告からその主張の請求原因(三)の(1) ないし(7) の約束手形に基いて貸付を受けたのはいずれも同月十六日以前のことであつて、被告らの連帯保証債務発生以前のことに属するから、被告らは訴外組合の前記各貸金債務については連帯保証の責を負わない旨主張する。しかし、被告らが訴外組合の右農業手形借入に関する契約上の債務につき連帯保証した日時が同年四月十六日であることは当事者間に争いのないところであり、そして請求原因(三)の(1) ないし(7) の約束手形の振出日が同月十五日であることは前記認定のとおりであるけれども、原告が請求原因(三)の(1) ないし(7) の約束手形を現実に割引き(1) ないし(7) の各金員を訴外組合に貸付けたのは、同(三)の(1) ないし(5) の金員についてはいずれも同月二十一日であり、同(三)の(6) 及び(7) の各金員については同月二十四日であることはこれまた前段に認定したとおりであつて右連帯保証契約日以後のことに属することは明らかである。被告らのこの点の主張は理由がなく、訴外組合の右各借入金債務につき連帯保証人たる責任を免れるものではない。

(3)、しかして、訴外組合が前記各借入金債務に対し、請求原因(三)の(5) 、(6) 、(8) 及び(9) の各借入金については、原告主張の日時にその主張の各内金を支払つたのみで残金の支払をせず、またその余の各借入金については全くその支払をしないことは、被告馬場鉄治、同馬場佳二郎及び同新河善重の自認するところであり、また弁論の全趣旨によれば被告宮崎及び同池上の関係においても右事実を推認することができるから、被告らは連帯して原告に対し請求原因(三)の(1) ないし(4) 、(7) 及び(10)の各元金、同(5) 、(6) 、(8) 及び(9) の各残元金並びにこれらに対する原告主張の約定損害金を支払うべき義務があるといわねばならない。

よつて原告の請求原因(三)についての請求は理由がある。

四、請求原因(四)について。

(1)、原告が昭和二十七年十月三十日訴外組合及び被告らとの間に、訴外組合が将来訴外農林中央金庫から融資を受ける場合、原告において訴外組合の右借入金債務を保証すること、原告において訴外組合の右債務を訴外農林中央金庫に弁済したときは訴外組合は原告の弁済金全額及びこれに対する弁済日から完済まで日歩金四銭の割合による損害金を支払うこと、右被告らは訴外組合の原告に対する右債務を訴外組合と連帯して支払うこと等の約定による保証委託契約を締結したこと、訴外組合が昭和二十七年十一月一日訴外農林中央金庫から金二十四万五千円を借受け、原告が右契約に基づき訴外組合の右債務を保証したこと、しかし訴外組合が弁済期日に右債務の弁済をしないので、原告が昭和三十一年八月二十三日金七万一千六百七円、昭和三十二年三月三十日金三万七千六百三十三円を訴外組合に代つて弁済したことは、原告と被告馬場鉄治、同馬場佳二郎及び同新河善重との間に争いがない。

そして、被告宮崎及び同池上の各名下の印影がそれぞれ右被告らの記名であり、被告らの印章の印顆によつて顕出されたものであることは原告と右被告両名との間に争いがなく、特段の反対事情も認められないから、右被告らの関係部分につき真正に成立したものと推認される甲第十八号証(保証委託に関する約定書)及び同第十九号証(定期償還金員借用証書)、第三者の作成にかかり弁論の全趣旨によると真正に成立したと認められる同第十九号証中農林中央金庫水戸支所作成の符箋部分、証人砂押重美の証言により真正に成立したと認められる同第二十二号証(貸付金台帳)の各記載に証人砂押重美の証言を綜合すると、原告と被告宮崎及び同池上との間においても、また前示の各事実を認めることができ、右認定を左右するに足る証拠はない。

そして訴外組合及び右被告ら五名が、原告のなした右代位弁済金並びに約定損害金の支払をしていないことは被告馬場鉄治、同馬場佳二郎及び同新河善重の認めるところであり、弁論の全趣旨によると被告宮崎及び同池上の関係においても右事実を推認するに足る。

(2)、以上のとおりとすれば、被告らは連帯して原告に対し原告主張の代位弁済金及び右各弁済金に対する各弁済日から完済まで日歩金四銭の割合による約定損害金を支払う義務があるといわねばならない。

よつて原告の請求原因(四)についての請求は理由がある。

五、よつて原告の本訴請求はいずれも理由があるからこれを認容することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条第九十三条を仮執行の宣言につき同法第百九十六条を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判官 諸富吉嗣)

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